上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「塩分」は心臓の健康にとってやはりマイナスといえる

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 血液の量が増えれば、血管にかかる圧力が強くなるので血圧も上昇します。ですから、心機能が低下している心不全の患者さんや高血圧の人には、塩分制限が有効とされていて、日本でも数多くのエビデンス(科学的根拠)が存在しています。

■減塩は日本人の健康寿命の延長に貢献した

 かつて行われた、大規模な人数を長期追跡するコホート研究で、塩分摂取が多い北海道や東北などの地域では、胃がんの発生、くも膜下出血や高血圧関連疾患を発症する割合が多いことがわかりました。これを受け、厚労省や医学会が積極的に減塩対策を進めた結果、ピロリ菌対策の効果も加わっておよそ40年で胃がんは克服され、降圧薬の適切な服薬も相まって、高血圧に関係した心臓血管疾患も抑制された印象があります。

 また、減塩は心筋梗塞による死亡の抑制にも大きく貢献したと感じます。かつての日本、急性期治療が広く普及する以前は、心筋梗塞で亡くなる人が多いという事実がありました。先ほども触れたように、塩分過多は心機能を悪化させる大きな要因で、とりわけ一度心筋梗塞を起こしたり、心房細動などの慢性的な心臓疾患がある人にとっては深刻な問題です。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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