そこで、軽い利尿剤やナトリウムチャネル遮断薬といった薬剤を使ったり、生活習慣で減塩を順守させるなどの治療や対策が実施され、日本人の心臓疾患による死亡数は徐々に抑えられていったと考えられます。近年は高齢化が進んだことで慢性心不全による死亡が増え、心臓疾患で亡くなる人が再び増加している状況ですが、心臓に対する減塩の効果は、日本人の健康寿命の延長に間違いなく貢献してきたといえます。
冒頭でお話しした最近の研究は、まさに「過ぎたるは及ばざるがごとし」で、心臓を守るためには、やりすぎない程度に減塩を意識する生活を実践するといいでしょう。
専門家の立場としても、個人的には日本高血圧学会が推奨する1日6グラム未満を継続するのは極めて困難と考えます。あまり厳格に考えすぎると挫折してしまうケースが少なくないので、まずは塩分摂取量を急速に増加させないように心がけましょう。たとえば、飲み会で塩分の多いものをたくさん食べた後、小腹がすいたからとラーメンを食べるといった行動を避けるのです。塩分を抑え込みすぎず、なおかつ年齢や抱えている病気の状況を考えて、極端な塩分の取りすぎがよくないということを意識しておけばいいのです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」