老親・家族 在宅での看取り方

「元気だから放っておいて!」と主張する91歳女性に提案した案は…

患者さんの思いには可能な限り配慮する

「便は黒くないですか?」(私)

「薬の影響で黒より緑っぽい。便が出た後に少しヒリヒリするので、家にあるクリームを塗っているんですけどいいですか?」(本人)

「いいですよ」(私)

「あとちょっと風邪っぽい感じで、薬局で漢方を買ったんですが、これでいいですか?」(本人)

「いいですよ、ご自分で調整されているんですね。これで効かなかったら処方お出ししますので」(私)

「はい。少しずつ元気が出て、今日は洗濯を自分でしたんですよ」(本人)

「いいですね」(私)

 時に自信に満ちあふれ活力が増しているご様子。元看護師として自分の意見をはっきりと我々に伝えることも。また不自由なく歩行し好きなものを食べることもされており、朝食は近所のカフェに行き、小さなお子さんを持つお母さんと、小児科の経験から子育てのお話をされることを楽しみにされていました。ですが次第に認知症の状態が進むにつれ、日に日に頑固な性格はさらに強くなっていかれQOL(クオリティーオブライフ=生活の質)の低下は確実に進んでいきました。

 それでも私たちは柔軟にイレギュラーな対応をし、患者さんの思いに可能な限り配慮するように努めました。

 それもひとえに患者さんにとって充実した生活を支えることは、在宅医療の重要な役割だと考えるからです。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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