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「胚も人間」米アラバマ州最高裁の判断で、体外受精が危機に

アメリカでは年間9万人が体外受精で生まれているが…(C)iStock

 しかし、今回の判断では、胚も人間の子供であるため、こうした破棄も不法死亡になってしまう。破棄した医療者が訴えられてしまうのです。

 そうならないためには、極端にいうと、受精した胚は半永久的に保存しなければなりません。しかし多数の胚を半永久的に保存するのは、ほとんど不可能です。このままでは体外受精自体の存続が危うくなるのでは?という不安は、すぐに現実になりました。アラバマ大学病院が体外受精を一時停止したのです。

 実は「胎児にも人権がある」として、人口妊娠中絶に反対するキリスト教右派は、体外受精にも反対してきました。中絶は現在アメリカ14州で禁止されていますが、同じことが体外受精に及ぶ可能性があります。

 そして中絶の是非と共に、今年の大統領選の大きな争点として、アメリカを激しく分断することが予想されています。

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シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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