正解のリハビリ、最善の介護

脳卒中の後遺症で低下した「機能」や「能力」はどのように向上するのか?

ねりま健育会病院院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

 脳卒中や脳外傷などで後遺症が出た時、「元通りに回復したい」と思うのは当然の気持ちです。

 ただ、そうした病気やケガで大きな脳損傷が生じた場合、必ず後遺症が残り「機能障害」が起こってしまいます。麻痺で手足が動かない、手足がしびれて動きがわからない、顔が動かせない、目が見えない、耳が聞こえない、うまく話せない、話が理解できない、計算できない、食べ物をのみ込めない、記憶できない、注意力がなくなる……さまざまな障害が現れるのです。

 脳卒中などの場合、こうした機能障害の後遺症は、重症度にもよりますが約3~6カ月で回復のピークを迎えます。つまり、運動麻痺、感覚障害、嚥下障害、言語障害、高次脳機能障害といった機能障害がどの程度残ってしまうかは、おおむね発症後3カ月でわかるということです。その3カ月間は、時間とともに脳組織が安定し、脳浮腫や炎症が改善して機能が回復していきます。その過程で、壊れた脳神経細胞や神経線維の部分は機能障害が残り、その重症度が決まるのです。

1 / 4 ページ

酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

関連記事