正解のリハビリ、最善の介護

能力を高めるためのリハビリ医療で「FIM」をどのように使うのか

ねりま健育会病院院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

「機能障害」や「能力障害」の回復の指標として使われるのが「FIM(機能的自立度評価法=している能力の指標)」と「BI(バーセルインデックス=できる能力の指標)」です。前回に続き、リハビリ治療におけるFIMの使い方について詳しく解説します。

 リハビリの進行状況を把握できるFIMは「セルフケア」と「交流・社会的認知」で評価します。「セルフケア」の評価は以下に挙げた13項目で行い、リハビリを開始して最初の1カ月でほぼすべての項目が向上しますが、回復パターンにはある程度の傾向があります。

 セルフケアにおいて1カ月で改善しやすい動作(項目)は、食事、整容、上半身更衣、排尿、排便、ベッド移乗です。次に、下半身更衣、トイレ移乗、トイレ動作が回復してきますが、重症例では介助がなくなるまでに3カ月以上を要します。

 最も回復に時間を要するのが、入浴洗体、風呂移乗、歩行、階段昇降の項目で、重症例では介助がなくなるまでに6カ月以上を要することも珍しくありません。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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