正解のリハビリ、最善の介護

脳卒中の後遺症で低下した「機能」や「能力」はどのように向上するのか?

ねりま健育会病院院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

 FIMは“している能力”の評価で、BIは“できる能力”の評価になります。ですから、当然、FIMの値は低くなります。とりわけ、認知症や精神・高次脳機能障害が重度である場合は、本人が何もしようとしないため、FIMは非常に低くなってしまいます。

 FIMは「セルフケア」と、「交流・社会的認知」で評価します。セルフケアの評価は、食事、整容、入浴洗体、上半身更衣、下半身更衣、トイレ動作、排尿、排便、ベッド移乗、トイレ移乗、風呂移乗、歩行、階段昇降という13の運動項目で行います。なぜ、この13項目が重要かというと、これらの運動項目を自分でできれば、介助がなくても自宅退院が可能になるからです。

 一方、交流と社会的認知の評価は、理解、表出、社会的交流、問題解決、記憶の5項目の認知項目で行います。

 これらの項目は、独居での自宅退院の時に特に重要です。生活支援者と言語で交流できるか、穏やかに必要な社会的交流ができるか、困った時に自分で解決できるか、もしくは相談できるか、生活に必要なことが記憶できるかなどの認知能力を評価します。

3 / 4 ページ

酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

関連記事