正解のリハビリ、最善の介護

脳卒中の後遺症で低下した「機能」や「能力」はどのように向上するのか?

ねりま健育会病院院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

 リハビリ治療では、これらの能力を向上させていきます。そのためには、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師のチームの力が必要です。

 主治医や担当スタッフは、これらの能力がリハビリ治療によりどのような時間経過で回復するのかを知っておくことが極めて重要です。

 まず、基本的に最初の1カ月間でFIMもBIもほぼすべての項目が向上します。たとえば脳卒中では、入院から1週間が最も回復する期間であるケースが多く、そこから1カ月は大きく改善していきます。このため、軽症例は1カ月で自宅退院となります。

 もしも最初の1カ月間で良好な向上傾向がない時は、「回復する可能性がない」あるいは「治療がうまくいっていない」と判断できます。その場合は非常に心配な状態です。リハビリ治療の見直しが必要になるケースもありますから、主治医に確認したほうがいいと思われます。

 次回、リハビリ治療におけるFIMとBIの使い方について、さらに詳しくお話しします。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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