上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

救急隊に活躍してもらうには医療機関側の受け入れ体制が重要

(C)日刊ゲンダイ
できる限り早く救急車を返す

 そんな救急隊にしっかりと仕事を全うしてもらうためには、医療機関側の受け入れ体制も重要です。救急隊は現場で収容した患者さんを救急車で医療機関まで搬送します。その患者さんを迅速に応需して、少しでも早く救急車をまた次の現場に回す、というのが医療機関側の仕事のひとつなのです。

 しかし、それをわかっていない医師や医療機関が圧倒的に多いのが現状です。「自分たちが救急の中心だ」という意識があるのです。これはとんでもない思い違いで、救急車と救急隊が活躍してくれなければ、救急医療は成立しません。救急医療を掲げる医療機関の最も大切な姿勢は、断らず、迅速に患者さんを応需すること、そして救急車を早く返すことです。そのためには、患者さんを収容できるベッドや、対応できる人員といった設備要件を整えておくことが求められます。

 救急車が到着し、ストレッチャーで運ばれてきた患者さんを収容した後、医療機関側は「たしかに応需しました」というサインをする必要があります。救急車を早く返すためには、受け入れの準備をしっかり整えておいて、患者さんを収容してからサインするまでの時間をできる限り短縮する必要があるのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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