上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

救急隊に活躍してもらうには医療機関側の受け入れ体制が重要

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 そこで、私が院長を務めた時代に救急のテコ入れを行いました。救急隊から連絡があったときは確認作業で待たせることをなくしました。さらに、独自に自前の救急車を導入し、受け入れた患者さんを移送するときはそちらを使うようにして、公共の救急車と救急隊がすぐ次の現場に向かえる体制を整備したのです。

 その結果、救急の応需率が目に見えてアップしました。それまで80%台後半だったのが、最高で98.9%まで上がり、年間平均でも95%とほとんどの救急患者さんを受け入れることができるようになったのです。

 同時に救急隊が高いモチベーションを維持しながら業務に取り組んでもらえるような試みも実施しました。あるとき、救急隊員が患者さんを搬送してから次の現場に向かうまでの短時間内に、自動販売機で飲み物を買っている姿を目にしたのです。それならばと救急センターに飲み物や軽食を用意して、救急隊員向けに提供したところ好評でした。こうしたちょっとした気遣いで、救急隊と現場の医師や看護師たちとのコミュニケーションもかなり良くなったという結果を得ました。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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