第一人者が教える 認知症のすべて

アミロイドβがたまり、最終的に神経細胞死滅や脳の萎縮を招く

脳の状態を早めに知って対策を

 今後も、新たな薬が続々と登場してきます。アミロイドPET検査で早くに将来の認知症発症のリスクを知り、対策を講じていくことで、万が一認知症を発症しても、そういった新たな薬を使えるチャンスを得られる可能性は高い。私はレカネマブの登場を、認知症治療において「ようやく夜明けが見えてきた」と捉えているのですが、どんどん“明るくなっていく状況”に対し、備えておくに越したことはないと考えます。

 そしてこれは本連載でも何度となく強調していることですが、アミロイドβの蓄積が見られても、認知症を発症する前に、できる対策はたくさんある。

 アミロイドβの蓄積が始まりとなって発症に至るアルツハイマー病は、その発症まで20~30年かかります。脳の神経細胞の死滅が起こるのは脳全体のほんの一部で、全てにエラーが生じるわけではない。つまり、アミロイドβの影響を受ける脳の場所「以外」の機能を高めれば、日常生活に支障が生じてくる時期をずっと遅らせることができるでしょう。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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