正解のリハビリ、最善の介護

能力を高めるためのリハビリ医療で「FIM」をどのように使うのか

ねりま健育会病院院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

 一方、右脳損傷による精神・高次脳機能障害では、言語は良好でも社会的交流や問題解決の回復が難しく、自宅退院後に増悪するケースがありますので注意が必要です。これは自宅復帰後に脳への情報量が莫大に増加するためです。ですからこうしたケースでは、信頼できるリハビリ主治医との退院後の連携が重要になります。感情障害が強く生じた時は内服治療を要することもあります。

■チームの連携が重要

 介助がなくても自宅退院ができるかどうかの判断材料になるのはFIMの項目の点数です。このため、これらのFIMの項目を誰が治療するのかが大切です。主治医は、それぞれの役割をチームのメンバーに振り分け、毎月の目標を立てます。ほぼすべての動作に介助が必要な状態から、できる限り介助量を減らす。そして、見守り(準備のための援助が必要だが手を触れなくてもできる)、修正自立(補助具があればできる)、自立(何も使用せずにできる)としていく。それを実践するのがリハビリチームなのです。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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