正解のリハビリ、最善の介護

能力を高めるためのリハビリ医療で「FIM」をどのように使うのか

ねりま健育会病院院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

 これらの回復パターンを知っていると、回復経過が順調なのかが理解でき、今後の在宅復帰計画のめどが立ちます。自宅退院の第1次目安は、トイレ動作と歩行が自分でできるようになることです。入浴移乗、洗体、階段昇降は、介護保険によるヘルパーなどの介助サービスやデイサービスを利用すれば、自宅での生活は成り立ちます。

「交流・社会的認知」の評価は、理解、表出、社会的交流、問題解決、記憶の5項目で行います。これらは超高齢による認知機能の低下や、失語症、精神・高次脳機能障害によって低下します。超高齢で重度の認知症の場合は、5項目すべてで介助が必要となり、退院時の回復が望めないこともまれではありません。

 左脳損傷による失語症の場合は、理解と表出が6カ月の時点で介助が必要でも、就労年齢にあたる15歳以上65歳未満の方は年単位で毎年回復し、3年ほどで介助が不要になるケースも少なくありません。失語症では、社会的交流、問題解決、記憶の障害は言語より回復が良く、3カ月ほどで回復して介助が必要ではなくなる傾向があります。

2 / 5 ページ

酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

関連記事