独白 愉快な“病人”たち

落語家 林家木久扇さん(77) 喉頭がん

林家木久扇さん(C)日刊ゲンダイ

 放射線治療初日、待合室で腰かけていると、他の患者さんから「あら~、キクちゃんもがんなの? 治らないわよ。うちのダンナもがんなの、治らないの」と話しかけられてね。緊張しているのにいやなババァだなと思いましたよ。

 処置室に入ると、「着衣を脱いでから放射線室に入るように」と言われ、全裸で出たら、看護師さんが驚いて。脱ぐのは上半身だけでよかったんです。まぁそのおかげで、看護師さんと仲良くなりましたけどね。

 剣道の面のような白いマスクをつけて左右から20秒ずつ照射。これを月~金の5日やりました。治療時間は短いし、辛い物を控えるぐらいで食事も行動も制限はない。声は出なくなったけれど、副作用もありません。

 ただ、この治療用機械の値段が10億円と聞いて、病気よりも治療費が心配になってね。アメリカだと治療費が870万円もかかるそうです。ありがたいことに日本の高齢者保険医療のおかげで、後期高齢者の私はお安く済みました。

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