天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

左心耳縮縫術で脳梗塞を予防する

順天堂大医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 心機能が落ちている状態は、一般的に術後半年ほど続きます。そこから1年ほどで徐々に回復してきて、2年くらいでほぼ手術前と同じような状態に戻ります。ただし、治癒過程は患者さんによってさまざまで、切開した場所や癒着の具合、手術の種類などによって変わってきます。回復までに時間がかかる人は、それだけ心機能が低下している状態が長引き、脳梗塞を起こすリスクも高くなるのです。

■天皇陛下にも受けていただいた

 そうした術後の心原性脳梗塞を防ぐためには、患者さんは血液を固まりにくくする抗凝固剤を服用しなければなりません。しかし、人工的に血を止まりにくくする薬は、何かアクシデントがあった時に重篤な状態になってしまうリスクが高いといえます。手術後、抗凝固剤を飲んでいた患者さんが転倒し、脳出血を起こして植物状態になってしまったケースもありました。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。