Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【西川きよしさんのケース】まずはPSA検査で治療のタイミング探る

西川きよし(C)日刊ゲンダイ

 早期の前立腺がんが命を脅かすようになるまで8~10年かかるとされています。手術で勃起神経が損傷されると、男性機能が失われることもあり、尿漏れも少なくありません。

 そんな後遺症がある一方、手術を受けたグループと受けずに経過観察したグループを比較した結果、寿命に差がなかったとする研究結果もあるため、PSA検査などで様子を見ながら、治療のタイミングをうかがうこともありうるのです。

■脱メタボが予防に

 特に高齢者の場合、PSAの数値が安定していれば、手術を受けずに寿命をまっとうできる可能性もあります。剖検例では、大体4割に前立腺がんが見つかります。がんに気づかず亡くなる方が少なくないことも、タイミング論を後押しする根拠です。

 手術には、1~2週間の入院が必須。いろいろな事情で長く休むことができない人は、経過観察しながらホルモン療法や放射線治療を選ぶことになります。タレントの間寛平さん(66)は6年前、アースマラソンの途中で前立腺がんが発覚しましたが、完走を希望。手術の後遺症で走れなくなることを不安視し、ホルモン療法と放射線治療を選択して、見事、完走されました。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。