天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

予定日の前日でも患者には手術を断る権利がある

順天堂大学医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 心臓手術の場合は、前回も紹介した「リスクスコア」に基づいた判断が重要です。患者さんの状態によって手術の危険度がどの程度かを示す指数で、仮に「ユーロスコア」で20%を超えると、手術を受けたことによる死亡率は50%近くになってしまいます。

 その患者さんに感染症があり、人工透析を受けていて、脳梗塞の既往があるような場合にはリスクスコアが50%以上となることが多い。手術を受ければ術後合併症なども含め、80%くらいが亡くなるほど高リスクになります。

 患者さんが自分の身を守るためには、そうした客観的なリスクスコアをしっかり理解した上で、手術を受けるかどうかを選択すべきなのです。正しい手順を踏んでいる病院は、必ずリスクスコアを提示した上で、患者さんが自身のリスクを理解するまで細かく説明し、手術の同意をもらいます。逆に、そうした客観指数を出さないまま「すぐに手術をしなければ命が危ない」などと手術を勧めるような病院は、適応外のむちゃな手術をやりかねません。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。