■4割が治りやすい「粘膜内がん」
また、粘膜内がんは放っておくと“本物の”胃がんに成長するとされています。しかしそれも確たる証拠はなく、自然消滅するものも少なからずあるようで、いまだに議論が続いています。
その内視鏡手術が、手術全体の半数近くを占めているのです。新規患者数をもとに計算すれば、4割近くが粘膜内がんだったことになります。我々がイメージする“本物の”胃がん患者は意外と少なく、実は年間8万1000人程度にとどまります。つまり、新規患者数でも肺がん(約11万3000人)にトップの座を譲っているというわけです。
一方、2014年における胃がん死亡者は、約4万8000人でした。この数字は過去数年間、あまり変動していません。粘膜内がんで亡くなる人はほとんどいないため、胃がん死亡者のほぼ全員が“本物の”胃がんと診断された患者ということになります。つまり、“本物の”胃がん患者は、何カ月後か何年後かに約6割の確率(4万8000人/8万1000人)で亡くなる計算になるのです。
「胃がんは治る病気になった」と言われるようになりましたが、それは粘膜内がんを含めた、結構水増しされた数字に基づく話。本当はまだかなり分が悪いのです。
明細書が語る日本の医療