明細書が語る日本の医療

胃がん医療の均てん化 東北は手術力が低い

東北は手術力が低い(C)日刊ゲンダイ

■青森と佐賀の「腹腔鏡」率の差は6倍弱

 腹腔鏡の全国平均は37・2%。患者10人中約6人が開腹、約4人が腹腔鏡という割合です。ところが都道府県別に見ると、とんでもないほどの格差が存在するのです。トップの佐賀県が51・7%であるのに対して、最下位の青森県はなんと9・0%。均てん化どころの話ではありません。全体的に西日本(九州、近畿、中国・四国)は腹腔鏡の割合が高く、東北や北関東など東日本・北日本では低くなっています。

 東京都は全国平均とほぼ同じ34・5%でした。国立がん研究センターの資料によれば「胃がんは日本海側に多い」そうです。患者が多ければ、それだけ進行した胃がんも多いはず。秋田県や青森県では、そうした理由から腹腔鏡手術の割合が低いのかもしれません。

 しかし、上位2位の鳥取県や6位の和歌山県も、胃がんが多いことで知られています。また逆に岩手県や沖縄県、三重県などは胃がんが少ない地域です。胃がん患者の多さと腹腔鏡手術の割合は、どうやら無関係。この違いは、やはり医療技術の格差が反映された結果と考えるべきでしょう。

 東北や北関東には、腹腔鏡で胃がんを切れるような高度なスキルを持った医師が少ないのかもしれません。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。