「先生、今日はいい知らせがあります。先月ご相談したTさん(65歳・男性)が、歩けるようになってK病院を退院されるそうです。本当によかった」
F病院のS医師がニコニコしながら私にこんな報告をしてくれました。
Tさんは肺がんで脊椎に転移があり、脊髄麻痺で足が動かない状態でした。そのままでは回復が難しい状況でしたが、手術が間に合ってすたすたと歩けるようになったのです。劇的な回復で、本人はもちろん、担当医をはじめとしたわれわれもバンザイ! と叫びたいくらいの喜びでした。
1年前、Tさんは肺がんと診断されて手術で右上肺を切除しましたが、半年後、左右の肺と胸椎に転移が見つかりました。それでも、分子標的薬「ゲフィチニブ」の内服により、肺転移はほとんど消失しました。ただ、胸椎転移には放射線治療が行われたものの、がんは次第に脊髄を圧迫するようになり、下肢の麻痺症状で歩けなくなってきたのです。
がんと向き合い生きていく