がんと向き合い生きていく

がんの骨転移による下肢麻痺は発症から48時間以内が勝負

都立駒込病院の佐々木常雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

「先生、今日はいい知らせがあります。先月ご相談したTさん(65歳・男性)が、歩けるようになってK病院を退院されるそうです。本当によかった」

 F病院のS医師がニコニコしながら私にこんな報告をしてくれました。

 Tさんは肺がんで脊椎に転移があり、脊髄麻痺で足が動かない状態でした。そのままでは回復が難しい状況でしたが、手術が間に合ってすたすたと歩けるようになったのです。劇的な回復で、本人はもちろん、担当医をはじめとしたわれわれもバンザイ! と叫びたいくらいの喜びでした。

 1年前、Tさんは肺がんと診断されて手術で右上肺を切除しましたが、半年後、左右の肺と胸椎に転移が見つかりました。それでも、分子標的薬「ゲフィチニブ」の内服により、肺転移はほとんど消失しました。ただ、胸椎転移には放射線治療が行われたものの、がんは次第に脊髄を圧迫するようになり、下肢の麻痺症状で歩けなくなってきたのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。