■「あのまま亡くなった方が幸せだった」と言われて…
おばあさんに再び異変が起こったのは、翌年の5月のある夜でした。急に全身の痙攣を起こし、救急車で病院に搬送されました。担当医からは「これまでの内服治療が効かなくなり、脳の転移が増えたために痙攣が起こった」と説明されました。がんの治療は行わず、抗痙攣剤などの点滴や酸素吸入などで様子をみることになったのです。
数日たってもおばあさんは意識がない状態で、小さい痙攣を繰り返しています。心配した孫娘が病室を訪れていたとき、驚くことがありました。中年の女性清掃員の独り言のようなつぶやきが聞こえてきたのです。
「前に入院したときに薬で治療されたから、今こうして苦しんでいるのよね。ほら、前よりも苦しそう。あの時、治療しないであのまま死なせてあげればよかったのに……。お金もかかるし、みんな大変でしょう。かわいそうに、こんなにしてまで生かされて……」
がんと向き合い生きていく