そんなドラマの象徴ともいえる「私、失敗しないので」というセリフは、現実の外科医のホンネでいえば、「私、失敗したくないので」になるのではないでしょうか。失敗したくないからこそ、外科医は術前にさまざまな検査を行い、細かい検査データを精査して、これまで見つかっていなかったような隠れた症状や全身状態を確認します。そして、必要な人員、医療材料、機器などを計算し尽くして、万全の準備で予定手術に臨むのです。
まさに、備えあれば憂いなし。受験もそうですが、失敗しないためには「もう、いつ本番が来ても大丈夫」と思えるくらい事前に準備を整えておくことが大切なのです。
さらに、そのようにして無事に手術を終えたあとも、合併症やそれによる重要臓器のトラブルを起こさないことが重要です。たとえ手術そのものがうまくいっても、そうなれば失敗です。“いい手術”ができていれば、あるタイミングから誰かが何かをしなくても、患者さんは自然によくなっていきます。こうなって初めて「私、失敗しないので」と言い切れるのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」