Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

医療にも人工知能普及 AIがん診断は胃も皮膚も正答率9割

 胃がん検診は2年前から胃カメラで受けられるようになり、内視鏡医が不足しています。内視鏡検査で撮影される画像は1回150枚に上りますから、AIによる自動診断は医師の負担軽減として注目でしょう。

 全国32病院から集められた30万件の検査画像データがディープラーニングに使われていて、今後もデータの蓄積が進みます。ビッグデータがAI診断の精度を高めていくのです。内視鏡検査の診断は、医師の技量差が大きいだけに、病変の見落とし防止にも役立つでしょう。

 筑波大と京セラのグループは、AI診断を皮膚がんに活用。その正答率も9割前後。近い将来、がんの画像診断は、AIに置き換わる可能性が高い。CTやMRIでも、それらの画像データをAIに学習させ、自動検知する仕組みのシステム開発が進んでいます。

 手前ミソですが、東大医科研が「人工知能が人の命を救った国内初のケース」と発表したのは2年前の8月です。人工知能は米IBMのワトソンで、がんに関する2000万件の論文を学習。当時、医科研で急性骨髄性白血病と診断されて2種の抗がん剤治療を受けていた60代女性は、思うほど回復しませんでした。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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