天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

手術用ガーゼの置き忘れを防ぐ新しい技術が登場

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 体内に残されたガーゼは、徐々に周囲と癒着して修復組織が入り込んだ結果、腫瘍のように居座って慢性の痛みや癒着する臓器の障害を来すようになります。これは「ガーゼオーマ」と呼ばれ、臓器にがっちり癒着して摘出が難しくなってしまう場合もあります。場所によってさまざまですが、腹痛、便秘、吐き気といったつらい症状が表れたり、壊死や穿通などの合併症を引き起こす可能性もあるのです。

 ガーゼの置き忘れを防止するため、いまはX線で確認できる糸を織り込んだタイプのガーゼが広く使われています。レントゲンに写るため、術後に撮影を行えば置き忘れがないかどうかを確認できますし、ガーゼの枚数が一致しなかった場合は、どこに置き忘れたかをすぐに特定できます。

■一度だけ縫合針を置き忘れたことが

 さらに、最近はガーゼ一枚一枚にGPSチップを埋め込んだタイプも登場しました。スマートフォンのGPS機能のように、モニターでかなり狭い範囲までガーゼがどこにあるのかを確認できます。置き忘れを防止するための最新の技術といっていいでしょう。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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