天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

遺伝子検査は心臓疾患の予防にも大いに役立つ

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 血液、口の中の粘膜、唾液などから染色体の遺伝子を調べ、病気のリスクや体質を判定する「遺伝子検査」が急速に進歩しています。

 遺伝子は、生物すべての生命活動を支えるタンパク質の“設計図”なので、遺伝子の異常を見つけ出せば、その人がどのような病気にかかりやすいのか、どのような薬が効くのかといった傾向がわかります。あらかじめそうした遺伝的傾向を把握しておけば、それに応じた対策を講じることもできます。病気の発現を早い段階でキャッチできれば、規模が小さく体への負担が少ない治療で済む可能性があるのです。

 当院でも、本格的な遺伝子検査外来に力を入れています。4月からゲノム(遺伝情報)の専門家を新たに招いて担当してもらい、遺伝子検査が一般的にも広まってきたがんと、マルファン症候群などの優性遺伝病(両親から1つずつ伝わる遺伝子対のうち、どちらか一方の遺伝子に異常があれば発症する病気)の中で発病により寿命を縮める可能性がある疾患を対象に進めています。

1 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

関連記事