天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

遺伝子検査は心臓疾患の予防にも大いに役立つ

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 最近はそうした遺伝子検査の対象が心臓疾患にも広がりつつあります。それまでがんの遺伝子検査を展開していた米国のある企業が、「心臓の構造や機能に関係する遺伝子を調べ、遺伝性の不整脈、心筋症、動脈硬化などのリスクを明らかにする」と発表しました。リスクを早期に認識することで、心臓発作などの命に関わる突然の発症を予防するのに役立つとしています。

■リスク因子を把握

 たしかに、遺伝子検査は心臓疾患の予防に対してかなり有効だといえます。そもそも、心臓疾患は「家族歴」が発症に大きく関わっているといわれているからです。海外の研究では、両親がともに心臓疾患の人は、そうでない人に比べて2倍も心臓疾患を発症しやすいと報告されています。また、片親だけが心臓疾患の場合には、父親よりも母親が心臓疾患である人の方が、そうでない人に比べると発症率は1・5倍だったこともわかっています。子供は両親から何かしらの心臓疾患のリスク因子を引き継いでいて、それは世代を経るごとに濃くなっていくと考えていいでしょう。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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