がんと向き合い生きていく

がん治療が終わってから子供をつくる患者はたくさんいる

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 最近は月経周期に関係なく採卵する方法も検討されているようです。成熟卵子凍結法は確立していますが、卵巣組織保存、受精卵凍結保存などは、まだ研究段階のようです。これらの凍結保存に関しては、がんの治療担当医、産婦人科担当医が患者によく説明し、患者の十分な理解がとても大切だと思われます。患者にとっては、がんを宣告され、その治療法ばかりではなく妊孕性の問題も提起され、「心」が大変な状況であるのは間違いありません。

 がん治療医は「何よりもがん治療を最優先する」ものです。しかし、特に若い世代の一人一人の患者に対し、妊孕性を温存した治療法の有無や可否、生殖医療を専門とする医師との連携、がん治療開始が遅くなっても大丈夫なのか……といった点を十分に検討し、患者の理解、意思決定のために十分な情報を提供する必要があると思います。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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