がんと向き合い生きていく

「死の恐怖を乗り越える術」多くの患者に出会い考えたこと

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 ドイツの哲学者ハイデッガーはこう述べています。

「死んだら天国にいくとか、自分が死んでも子供が自分の生命を受け継ぐとかいうイメージによって、人は誰でも死の観念を隠蔽しようとする。しかし、これらは死に対する十分な了解ではなく、ただその厳しさを覆い隠すだけのものである。逆に、ここから死の不安ということが人間の気分の本質としてつきまとうことになる」

「死を直視せよ。良心の呼び声が聞こえてくる」

 ただ、そう言いながら良心の呼び声の説明がないのです。

「がん患者・家族語らいの会通信」には、ある方のこんな言葉が記されています。

「人間の体は死によって解体しても、他の生物や物の一部として永遠に存在し続ける」

 こうした先哲の助言はたくさんあります。しかし、その多くは自分自身が“安全地帯”にいるうえでの言葉に思えて、命が差し迫っている患者に響くのか、奈落から這い上がれる術になれるかどうかは疑問なのです。

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佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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