スーパーでレジ係を担当しているMさん(58歳・女性)は、初診の方でした。診察室に入って私の顔を見るなり、「安楽死させて下さい。どうしたら楽に死ねるでしょうか?」と言われるのです。
とっさに私は「え!? 安楽死なんてできませんよ」と答えようかと思いましたが、まずはどんな病気で、これまでどうされたのかを聞いてみました。すると、Mさんはこんなお話をしてくれました。
「実は私、膵臓がんなのです。1カ月前、肝臓に転移がきて再発したと言われ、抗がん剤治療を1回だけ受けたのですが、吐き気などの副作用が強くて続けられないと思って治療を断りました。そうしたら、担当の先生が『これまでずっと頑張ってきたから、あなたがそう思うならやめていいですよ』と言ったのです。もう手だてはありません。私はこの近くに住んでいます。どうか、苦しまずに最期を迎えたいのです。今のところ、どこにも痛みはありませんし、体は元気です。ここで診ていただけますか?」
がんと向き合い生きていく