独白 愉快な“病人”たち

こういう風に死ぬんだな…佐藤尚之さんが語る劇症型アレルギー

佐藤尚之さん(C)日刊ゲンダイ

 妻が電話してくれた病院へタクシーで着いた頃には意識がふわふわしてボーッとしていました。血圧が異常に低く、すぐに救命病棟に運ばれたのです。大勢の医師に取り囲まれて初めて「これはもしかして大ごとなのか?」と思っていると、左右の太ももにバンッバンッと注射を打ちこまれました。ボーッとした頭で「こういうふうにして死ぬんだな」と考えたのを覚えています。

 ショック症状自体は、アドレナリンを注射することで急激に楽になり、呼吸も正常になりました。体のかゆみもなくなって、2日後には退院したのですが、問題は「何がショックを引き起こしたアレルゲンだったか?」ということです。

■“海の物”はほぼ食べられなくなった

 それがなんと「アニサキス」(魚介類に寄生する寄生虫)だったんです。魚好きのボクにとって、それだけはあってほしくない現実でした。もちろんそれまでアレルギーはゼロ。花粉症ですらありませんでした。グルメ本もたくさん書いているほど食は生活の中心でしたし、特に魚が好きで浴びるほど食べてきたので、魚類がアレルゲンであるはずはないと思っていました。ただ、あの夜一緒に食事をした5人のうち2人がアニサキス症(アニサキスの幼虫が胃壁に食いつき腹痛が起こる感染症)になったと知り、IgE抗体検査(アレルゲンを調べる血液検査)の際に念のためにアニサキスをリストに入れたんです。すると、見事にアニサキスだけに激しく反応した数値が出ました。「ウソだろ?」と思い、友人知人のつてを頼って、より確実性の高い抗体反応テストを受けたのですが、結果は覆りませんでした。

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