がんと向き合い生きていく

「ひとは生きてきたように死んでいく」──本当だろうか?

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 たとえ、感謝して亡くなったとしても“よき死”なんてあるのでしょうか。災害や殺人の場合は別にして“悪しき死”というものがあるのだろうか?

■同じ病気なのに亡くなる人もいれば完治する人もいる

 がんの治療では、思わぬ効果があったり、思わぬ悪い結果が出たりします。約35年前、抗がん剤のシスプラチンが発売される前の年だったと思うのですが、胚細胞腫瘍の肺転移で2カ月入院していた2人の大学生が亡くなりました。そして、その翌年にシスプラチンが使えるようになり、同じ病気の若い患者は見事に「完全に治った」のです。

 近年、話題になっている免疫チェックポイント阻害剤も同じです。もう末期で、誰がみてもダメだろうと思われる患者が、一発逆転、見事に蘇る場合もあるのです。

 私が相談を受けた患者でも、それが1人2人だけではありません。真剣に「自分のお墓をどうしよう」と話されていた患者が、がんから解放され、生きる気力に満ちて再び仕事に取り組めているのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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