後悔しない認知症

認知症の進行と関係 聴力と視力の衰えには積極的な対応を

コミュニケーションをとるためには補聴器の使用も(C)PIXTA

「コミュニケーションの機会を増やし、情報の入力と出力を途切れさせないこと」

 このコラムではたびたび述べてきているが、認知症の症状の進行を遅らせるためには、これを忘れてはならない。高齢者の場合、円滑なコミュニケーションを阻害する要因のひとつとして「耳が遠くなること」があげられる。この聴覚の不具合も認知症の発症、症状の進行と決して無縁ではない。

 子どもは「聞こえないから話してもムダ」、高齢の親は「余計な雑音が入らなくなってラク」などと軽く考えがちだが、これはいただけない。耳が遠くなれば、入力情報が少なくなり、脳を刺激する機会が減る。結果、「話す」「書く」といった出力の機会も減る。発語の回数や書く言葉を考える機会が減るわけだ。これも脳にとってはいいことではない。新しい情報を入力できなければ、当然のことながら「昔話」に終始することにもなる。いずれにせよ、「脳を悩ます機会」が減る。これが脳の老化、認知症の進行を招くことになるわけだ。子どもは注意が必要だ。「玄関のチャイムに気づかない」「聞き返すことが多くなった」「テレビの音が大きくなった」「生返事ばかりしている」「首をかしげて話を聞く」「電話などで大きな声で話す」など、親にそんな変化が見られたらすぐに対応すべきだ。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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