後悔しない認知症

反論はしない 親の自慢話に「またその話?」は絶対に禁句

写真はイメージ

「いや、実はね……僕がね」

 酒席などで上機嫌になった上司や取引先の人間がそう切り出して、得々と自慢話を始めることがあるだろう。それもいつも同じ話である。聞くほうは「へー」「なるほど」などと合いの手を入れながら、初めて聞くような顔をしなければならないことがある。

 性格にもよるが、過去の自慢話、それも同じ話の繰り返しはおおむね老化現象のひとつと考えて間違いない。年齢的にも「先が見えてしまっている」だけに、過去の栄光を語りたがる気持ちはわからなくはない。だから、「その話はもう聞きましたよ」とは言わないでおく。

 これは仕事のシーンでのマナーだが、介護の場にも共通するものがある。相手の心証を害さず、いい気分にさせることが大事なのだ。

 認知症あるいは軽度認知障害(MCI)の高齢者にも、「自慢話」「昔話」を繰り返す傾向が見られる。そうした場合、子どもが慎まなくてはならないのが「またその話?」「自慢ばっかりして」といった冷淡な対応だ。認知症であるかないかにかかわらず、高齢者が昔話、とくに過去の栄光話をするとき、私は精神科医として、できるだけ話に耳を傾けることにしている。高齢者の昔話は精神面の安定を考えた場合、悪いことではないからだ。

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和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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