後悔しない認知症

感情的な叱責はもってのほか 大切なのは認知症の親への敬意

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「なんか親が子どもに戻っているような気がする」

 認知症あるいは軽度認知障害(MCI)と診断された親に対して、子どもはそう感じることがある。物事の理解力が低下したり、言われたことを忘れてしまったり、わがままを言ったり、感情をコントロールできなくなったりする。たしかに幼児的な特徴と似た症状が表れることは事実だ。

 しかし、医学的に考えると「子どもがえり」という表現は当たらない。幼児の場合、そうした言動は、脳の成長が不十分であるために生じているのに対して、認知症あるいは軽度認知障害の高齢者の場合、成長を終えてしまった脳が劣化し始めたことによって生じている。親の脳が子どもの脳に戻っているわけではないのだ。さらに、認知症だからといって、これまで培った知識、知性が脳から完全に失われていくわけではない。だから、認知症と診断された親を幼児語などで「子ども扱い」するのは大きな間違いなのである。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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