がんと向き合い生きていく

丸山ワクチンは70年以上も「治験」という形で使われている

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 先日、ある病院でこんな場面に遭遇しました。入院される患者さんが「丸山ワクチン」を持参し、担当医に「入院中に注射をお願いします」と話しているのを聞いたのです。

「え! 今でも使っているの?」と正直、私は驚きました。患者さんは、日本医科大から直接ワクチンを購入し、値段は40日分で1万円近くするようでした。がんに対して保険適用はなく、何十年も続く「治験」として患者さんは購入しているのです。

 私が勤めていた病院では、1975年ごろからの数年間、終末期に近いがん患者さん数十人から使用を依頼され、丸山ワクチンを使ったことがあります。体全体の免疫力を上げるがん治療(非特異的免疫賦活剤)として、抗がん剤と一緒に投与しました。

 しかし、一例もその効果を認めたことはありませんでした。そのため、もし患者さんから依頼されても、「私たちのところでは丸山ワクチンは投与しません」と使わないことにしました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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