がんと向き合い生きていく

丸山ワクチンは70年以上も「治験」という形で使われている

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 抗がん剤は副作用があるのに、丸山ワクチンにはない。本当にがんに効く? といったように、当時、メディアはがんの特効薬として大々的に取り上げました。各方面から国の保険適用を認可するようにとの要望もあり、社会的な問題にもなりました。

■臨床的な効果は科学的に認められていない

 結局、91年に丸山ワクチン濃厚液はがんに対してではなく、放射線治療の副作用による白血球減少の抑制剤として認可され、保険適用となりました。

 ただ、この放射線の副作用は臨床的に問題になることは少なく、有用性はそれほど大きいものではありませんでした。しかもその後、抗がん剤での白血球減少による感染症が起こった場合は、「G―CSF」(顆粒球コロニー刺激因子)というもっと強力に白血球数を増やす効果が得られる薬剤が開発されました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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