がんと向き合い生きていく

携帯番号は教えていなくても医師は患者をいつも気にしている

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 ある市の市議会議員の奥さん(当時56歳=胆のうがんが肝臓転移)が、某病院から転院を希望されて来院されました。私が「当院でお引き受けいたしますが、他の患者さんと同じように対応させてください。特別扱いはできません」と伝えると、「他の患者さんとまったく同じで結構です」とお答えになりました。

 ところが入院時、担当医は、議員である夫から「もしもの時のために先生の携帯電話番号を教えてください」と言われたそうです。その担当医から「携帯番号を教えなければならないでしょうか?」と聞かれ、私は「教える必要はない。他の患者さんと同じでよい。特別扱いはしない。それで了解されています」と答えました。

 がんの分野だけではありませんが、治療は外来が主になっています。それもあって、患者は「自宅で何かあった時のために担当医の携帯電話番号を聞いておきたい。そうすれば安心できる」と思われるのでしょう。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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