がんと向き合い生きていく

生後2カ月でお腹にがんができた女の子に思った「命の価値」

佐々木常雄院長(C)日刊ゲンダイ

 ある日、1歳になったばかりの意識がない女の子Tちゃんが、そっと運ばれてきました。丸くてぽっちゃりしたかわいい子供でした。小さなベッドに寝かされて、そっと、そっと運ばれてきました。頭を少し動かしただけで、けいれんの発作を起こすのだそうです。

 Tちゃんには、たくさんの管がついていました。けいれん止めの薬がわずかずつ静脈内に投与されるようになっています。頭髪はなく、頭には細い管が入っていて、脳圧が高くならないように脳脊髄液が調整されています。他にも小さな胸の真ん中に点滴の束があって、カロリーが高い栄養がそこから静脈に入ります。おしっこも出せないので、尿道に細い管が入っていました。

 私は小児科医ではなく、がんを持ったこんなに幼い子を診察したことがありません。ただただ「かわいそう」と思いながら、邪魔しないようにTちゃんの動きを見ているだけでした。そして、一緒についてきた医師と看護師が、こちらの診療所の医師と看護師に手際よくたくさんの申し送りをしているのを聞いていました。

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佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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