工場内の見学は食品衛生上、入室禁止で、入り口のドアから顔だけ入れて、のぞかせてもらった。職員は揃いの帽子に、白の作業衣。小麦を練り、パンにアンを入れ、窯で焼く。会話は少なく静かに続く。
認知症患者のほかに、工場にはボランティアやNPO法人のスタッフも参加していた。全国からの見学者も絶えない。
「工場で働く認知症患者さんを見ていただくために、工場をガラス張りにしようかと考えました。見積もりを取ったところ、金額が1000万円で、まだ、その余裕がありません」(同NPO法人・鈴木しげ理事長)
もちろん「かめキッチン」で好きなパンを選択して、テーブルで食べてもいい。レストランは4、5人掛けのテーブルが並び40~50人は優に入れる広さだ。
客から認知症患者の調理する姿を見てもらうために、店内とキッチンの境は低く設計されている。認知症の父や母が調理するのを見て、驚く家族も多いという。
「『おじいちゃんすごい! かっこいい』と声を上げるお孫さんもいます」(木村さん)