奥さんをはじめ、周囲はほとんどさじを投げていた。ところが、ある日、みぞおちに杭を打たれたような激痛に襲われた。
「あの時はホント死ぬかと思いました」とAさん。急性膵炎だった。
「二度とあの痛みは経験したくありません。それに『今度、入院したら知らないから』と妻から言い渡されたこともあり、お酒をやめることにしたんです」
少しでも飲むと深酒になることを自覚していたAさんは、きっぱりと断酒。すでに3年が経つのだという。
「アルコール依存症の唯一の治療法は断酒であり、節酒ではありません。状況により治療方法はさまざまで、離脱・断酒、酒害教育、抗酒剤などの薬物療法、心理社会的治療(カウンセリング)などがありますが、一番大切なのは、Aさんのように本人の意思といえるでしょう。ある意味、麻薬などの中毒症のそれと非常に似ています」
手遅れになる前に、酒との付き合い方を見直したいものである。 =構成・中森勇人
(おわり)
ストレス社会の生き延び方