さらに、Aさんはベッドに入ってから考えました。
セカンドオピニオンをお願いすることには決めたが、B医師が言った「あなたらしく生きる」とは何なのか? もし、がんになっていなかったら何をしたかったのだろう?旅行か? たしかに旅行は好きだが……。
そういえば思い出した。若い独身時代、ちょうど旅行の直前に失恋し、旅先で遊覧船の美しい景色を見ても、「彼女のいない旅行なんて意味がない」と思ったな。仕事で失敗した時、社長から勧められて家族旅行に行った時も、まったく景色が目に入らず、頭は失敗のことしか考えていなかった。
あの時とはまったく状況は違うが、また同じ思いをするような、そんな気がして旅行に行く気にはなれない……。
いろいろなことを考えているうちに、Aさんは「今はまだ諦めたくない自分がある。そして希望を持っていたい」という思いに気がつきました。別の病院でセカンドオピニオンを受けてみて、納得できなかったらさらにもう1カ所でお願いしてみよう。そして、もし何か治療法が見つかって、その治療が決まり、その直前の旅行なら行ってみたい。そんな気がしたそうです。
がんと向き合い生きていく