がんと向き合い生きていく

がんを根絶できなくても「治療法がある」という事実は大切

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 2年前に膣からの出血が時々あったNさん(75歳・女性)は、自宅近くにあるB総合病院の婦人科で「進行した子宮がん」と診断され、手術、抗がん剤、放射線治療を受けました。

 その後は小康状態でしたが、6カ月ほど前から下肢の浮腫が強くなってきて、歩くのも一苦労です。買い物などは隣町に住む娘さんに来てもらって済ませ、何とか一人暮らしを続けていました。

 そんな中、1カ月ほど前からまた時々出血が見られるようになったので、娘さんと一緒にB病院の婦人科に行きました。そして、医師からこう言われたそうです。

「なかなか難しいね。今は出血は止まっているし、また出血で困ることがあったら来てください。治療はもう終わっているし、緩和ですね」

 Nさんは、「緩和」と言われたことがとてもショックでした。がんに対する治療が終わっているのは仕方がないとしても、出血や下肢のむくみを何とかして欲しい。もし出血が止まらなくなったり、下肢のむくみがひどくなって象の足のようになったらどうしよう。歩くのが大変になってトイレに行けなくなったら……などと考えただけで怖くなってきました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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