進化する糖尿病治療法

身長・体重で「肥満」と判断されても本当は肥満ではない人

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 これまでよく言われてきたのが、「BMI22が最も病気になりにくい」ということです。しかし昨今、この考え方は本当に正しいのか、専門家を中心に疑問の声が上がってきました。

 BMIを計算する際、身長、体重が問題になるのであって、体脂肪率や年齢などは考慮されません。

 たとえばラガーマンのような筋骨隆々の人では、体重も重くなりますから、必然的にBMIの数値は高くなります。もしそれが25前後だとして、肥満気味と言っていいのでしょうか? 逆もしかりで、体重は低めでも、運動習慣がなく内臓脂肪が多い人もいます。しかしBMIで見ると、正常範囲あるいは低体重。問題ないと言えるでしょうか? そもそもBMI25以上を肥満として扱うべきかどうか、きちんとしたエビデンスはありません。

 年齢でも違います。一般的に高齢者では、体重が低い場合、フレイル(虚弱)の可能性があります。フレイルとは近年注目されている概念で、体重の減少、疲れやすさ、筋力の低下などが見られ、サルコペニア(筋肉量の低下)やロコモティブシンドローム(骨や関節などの障害で歩行や日常生活に支障をきたす/通称ロコモ)につながり、寝たきりになる可能性が高い状態のこと。高齢者においては、低体重はむしろ危険で、小太りくらいの方が健康で長生きできる可能性が高いということは広く知られています。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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