後悔しない認知症

認知症の高齢者は脳トレよりも楽しく生きることが最も大切

「機嫌よく、楽しく生きる」が最も大切(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 だが、世の中に氾濫する認知症に関する情報には思わず首をかしげたくなるものがあることも事実だ。「認知症の進行を抑える」などのうたい文句で盛んに脳トレ、数独、パズルあるいは体操などを「認知症の特効薬」のように喧伝する医者がいる。その中には高齢者医療の臨床経験がきわめて乏しい医者が少なからずいる。何よりも問題なのは、そうしたプログラムを有料のセミナーなどでビジネス展開していることだ。エクササイズによって、トレーニングした項目のスキルは向上するが、認知症そのものの進行を遅らせるというエビデンス(科学的根拠)はない。

 長年、老年精神医学の臨床現場で生きてきた立場から力説したいのは、認知症の高齢者にとって「機嫌よく、楽しく生きる」が最も大切だということ。ストレスを感じながら脳のエクササイズやトレーニングに励むのではなく、気分よくレクリエーションとして脳や体を動かすこと。それが認知症の進行を抑えるために有効なのだ。「今回は解答率が低かった」「今日は4000歩しか歩かなかった」などとノルマのストレスを感じてエクササイズに励むよりは、「今日の『世界!ニッポン行きたい人応援団』は面白かった」「公園のコスモスがきれいに咲いていた」など、脳を心地よくする機会を増やしたほうがいいのだ。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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