後悔しない認知症

「ボケたね」と言われ「そうだね」と笑い合える環境作りが大切

写真はイメージ(提供写真)

「いやあ、参りました。よかれと思ったんですが、逆ギレされてしまって……」

 私が教えている大学の学生が困った顔で話す。途中から電車に乗ってきた高齢者に席を譲ろうとしたところ「余計なお世話だ」と相手の怒りを買ってしまったのだという。明らかに80歳を越えているように見えたし、足元もおぼつかなかったために席を立ったのに、というわけだ。現場で目撃したわけではないから、この高齢者を一方的に責めることはできないが、このタイプの高齢者が認知症と診断されると困った事態になるのではないかと思う。

「ボケたんじゃないの」などと自分の子どもに言われると怒りだすタイプだからだ。物忘れや言い間違いを指摘されるとからかわれたかのように感じてしまう。加齢とともに誰もが生じる「ボケ」症状といえるものだが、それをかたくなに認めない高齢者は、実際に子どもが認知症発症を疑い、医者に診てもらうことを勧めてもなかなか応じないこともある。その結果、発見が遅れることになる。初期の段階で診断や治療を受け、デイサービスなどを始めれば進行を遅らせることは可能なのだが、ボケを嫌悪するあまり、逆にボケにつかまってしまうことになる。

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和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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