A病院に戻って結果を話すと、M医師は「以前の文献で、内服薬で効果があったという報告があります。本当にあなたのがんに効くか分かりませんが、試してみましょうか?」と言ってくれました。暗かった気持ちが急に明るくなった気がしました。Tさんは「自分を担当してくれているのがM医師でよかった。某がんセンターのあの医師でなくてよかった」と強く思ったそうです。
状況が厳しくなっていることは、Tさん自身もよく分かっています。それでもM医師は、余命や先行きの見通しが暗いことなど、これまで一度も口にしたことはありません。Tさんは「このことに感謝しなければならない」と実感したといいます。
Tさんのお話を聞いた私がこのことをM医師に伝えると、こう言ってくれました。
「私も希望を持っていたいですから」
■本コラム書籍「がんと向き合い生きていく」(セブン&アイ出版)好評発売中
がんと向き合い生きていく