進化する糖尿病治療法

60代まではカロリー制限 それ以降は塩分を抑える

年を取ったら下肢筋力を維持する(C)PIXTA

しかし、先ほど述べたように、60代を超えると塩分の摂取量が過剰にならないように、特に気を配るべきです。筋力維持には、食事面ではタンパク質摂取が重要になります。ところが腎臓が悪いと、タンパク質の摂取には制限がかかります。腎臓は、高血圧が長く続くと機能が落ちやすい。高齢者には腎機能が落ちている人が少なくありません。

そして、塩分量の過剰摂取は血圧上昇を招きやすくする。長年の習慣で濃い味に慣れている方や、加齢で味覚が落ち無意識に味付けの濃いめのものを好むようになっている方がいます。レモンなど柑橘類の利用、スパイスやコショウの利用、調理方法の工夫で早い段階で塩分量を減らすようにしてください。

60代より前の若い年代、特に50代のうちに、ぜひとも検査を受けて、80代くらいまで元気でいられる臓器かチェックしてほしいのが、腎臓、心臓、血管の動脈硬化度。腎臓は相当悪くならないと自覚症状がないので、自分が感じる「異常なし」を信用してはいけません。採血でクレアチンあるいは、eGFRあるいは尿タンパク/アルブミンで比較的簡単に確認できます。心臓と血管の動脈硬化度は、中でも喫煙習慣がある人は、心機能の検査は必須です。50代で検査をし、たばこをやめる、食生活を変えるなどに取り組めば、80代まで元気でいられる率は高まるのです。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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