進化する糖尿病治療法

高齢者の心不全対策…SGLT2阻害薬が救世主になるか

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 心不全とは「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と定義されています。心不全の定義に当てはめると、糖尿病がある時点でステージA。心筋梗塞などを起こして心臓に疾患を抱えるようになるとステージB。心機能が低下して心不全を発症するとステージC。心不全を発症すると、現在の医療では完治しづらく、5年以内に50%の人が亡くなるともいわれています。つまり、糖尿病を発症しないことが重要であり、しかし糖尿病を発症してしまったら、今度は心筋梗塞を発症しないことが非常に重要なのです。

■糖尿病でなくても心不全予防に役立つ

 これまでは、糖尿病の薬は血糖値を下げるものの、心不全に関しては予防効果が見られませんでした。薬によっては、かえって心不全のリスクを高めるものもありました。日本で広く使われているDPP―4阻害薬も、心不全予防効果があるのではないかと期待されましたが、結局、抑制効果を証明できず、むしろ心不全が増えるという結果が出ています。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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