死を身近に感じたことで…訪問診療医が実感した「新型コロナ」の教訓<下>

小堀鷗一郎医師(C)日刊ゲンダイ

 そこで入院を回避し、ケアマネジャーによる手厚い介護のもと、自宅療養をすることになった。患者は5月下旬に亡くなったが、その前日には娘が遊びに来て、当日は入浴サービスを受け、リンゴのすりおろしも数さじ味わったという。穏やかな最期だった。

「現在は未知のものに対する恐怖から過度な対応が目立つように思いますが、もともと死はごく身近に存在するものであり、そのことを意識する者だけが自らの死に思いを致すことができるのです」

 死はいずれ誰にでも訪れるものだ。事故などで予期せず逝ってしまうこともあるが、多くの場合、どのように迎えるかを自分で選択できる。コロナの流行を無駄にはしたくない。

(おわり)

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小堀鷗一郎

小堀鷗一郎

1938年、東京生まれ。東大医学部卒。東大医学部付属病院第1外科を経て国立国際医療センターに勤務し、同病院長を最後に65歳で定年退職。埼玉県新座市の堀ノ内病院で訪問診療に携わるようになる。母方の祖父は森鴎外。著書に「死を生きた人びと 訪問診療医と355人の患者」(みすず書房)。

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