上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

新型コロナの影響で日本の医療体制の再整備が進むだろう

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 これまで大学病院が診ていた患者さんの8割近くは、そうした街の医療機関から紹介された患者さんで占められていました。“入り口”である街の医療機関の患者数が減っている状況では、大学病院の患者数も増えないのです。

 こうした医療体制の危機を受け、政府は「ウイルスとの長期戦を戦い抜くための医療・福祉の提供体制の確保」のために2兆7179億円を充てる第2次補正予算案を閣議決定しました。とはいえ、医療機関の損失補填という名目ではなく、あくまでも「新たなCOVID―19患者の受け入れや空床確保の補填」のための予算とされました。また、1カ月で10億円前後の減収になっている大学病院にとっては、「赤字の半分も埋まらない」といった声も聞こえます。

 現在も感染者が増え続けているうえ、ウイルスが活発になる秋から冬にかけて、さらに急増する可能性もありますから、医療機関の経営はさらに苦しくなります。今回の新型コロナ禍がきっかけになって、医療体制の再整備が進むのは間違いありません。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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